みなとまち読書クラブ

良質なサードプレイスを構築する

26「夜更けより静かな場所」 岩井圭也(著)

都会の片隅でひっそりと営業する古書店。およそ1か月おきの深夜12時に6人の男女が読書会のために集まり、指定された1冊の本について感想を語り合う。ジャンルとして海外文学、絵本、時代小説に詩集あり。そこまでは想像の範疇だったが、最後の2人いや正確…

25物語を知る順序で変わりうる背景 「N」道夫秀介

独立した6章から構成されている本作は、読む順の制約を受けずに1×2×3×4×5×6=720通りの読み方ができるという触れ込みを見て興味を惹かれ読んだ。ただ実際には一通りの読み方しかまだしていない。ところで結果として完成される全体像が同一なら読む順序を選択…

24考察の考察に楽しみがある「ドールハウス」矢口史靖(監督)

実寸の12分の1の縮尺たるミニチュアの家を本来ドールハウスと呼ぶ。そして、そこに「合わせ鏡」を配したためにに魔が差し始める話が「営繕かるかや怪異譚 参」に収録されている。 いつからか怖いだけの怪談を詰まらないと感じるようになった。5w2hが違っ…

23.生きるとは、平和とは何かを問い続ける勇気「あんぱん(上)」中園ミホ著

終戦から80年目の夏を迎えようとしている。東ヨーロッパや中東、そして東アジアにもきな臭い世界情勢がある。そのような中はたして、この国で普段から平和を考えている人はどれほどいるのか。また例えば私が特殊な思想的結社に所属することなく国際平和に…

22折り合いをつける知恵「営繕かるかや怪異譚」小野不由美(著)

コロナ感染症の影響が過去のものにつれマスクをする人の姿も減り、世の中が陰に通じていた気配が薄れてきてはいる。が気を抜けば闇バイトやブラック企業など平凡な人さえ闇落ちしてしまう怖さはあるし、来月7月5日に大災難が起こるというデマは私の職場で…

21.節制の大切さ「欲望100個書いてみた 派遣女子から年商20億」 小田桐あさぎ(著) /高坂ゆう香(著)

頑張っているのに報われないという想いを持つ著者が実業家としての成功をおさめるまでをマンガで著した一冊。 本書を手に取った時に「使命は自覚した時から動き、かつ自ら設定可能」という意味の短文を見つけ読み始めた。なおタイトルは著者の成功の核心と察…

20.「実は、拙者は」

給料前の財布からお札を取り出すまでもなく、一枚の薄っぺらな紙切れにさえ表と裏があるのだから、世知辛い世を生きなければならない人間は多面体であって当たり前であろう。 30か100かは別として友人・知人の数だけ別の顔を持つ人もいるだろうし、出入りす…

19映画「キングダム 大将軍の帰還」

映画版キングダムにおいて将軍王騎は1作品目から登場し異様な存在感を漂わせる。正当な秦国将軍ではなく、私兵を率いている姿は雄大ではあるが不気味さも持ち合わせている。 私欲で動くタイプではないことは威風が物語っているが、かと言って相手が一国の王…

18.100日後に死ぬワニ

人は生まれてきたからには亡くなる。その日は案外早く突然な場合もある。 ありがたいの反対を当たり前という人もいるが果たしてそうだろうか。本作がヒットした要因の一つは妙な説教臭さがないことではないか。つまり命あることの意味を僧侶だから、生物学者…

16.「知識ゼロから学べる簿記入門」 桜田はな(制作)

日商簿記3級は個々の単元は基礎的な内容であるが仕訳、勘定記入、決算など初学者が学ぶべき範囲は広い。そして商業高校生や職業訓練生など取得の必要がありながら日常的に使用しない用語のインプットが多ければ心理的負担は大きくなる。苦手とする箇所が1つ…

15.「スッキリわかる 日商簿記3級」瀧澤ななみ(著)

簿記とは端的に個人商店や企業における「帳簿記入法」である。「商品を売り上げ」「現金を得た」という出入り、つまり取引の二面性を克明に記録するところに特徴がある。ここを本当に理解できれば、世間の事象や個人の人生にも得失が一対で働いていることが…

13.「ただいま神様当番」青山美智子(著)

風変りな「拾い物」をした縁で、主人公たちが無邪気な神様と繰り広げることになるバトルが面白い。それは建前と本音の衝突である。 本作の言葉を借りて言えば「好きを仕事にするより、仕事の中に好きを見つける」ことのほうが実践的だと感じた。つまり転職サ…

12 ilusion~イルシオン~ 島谷ひとみ(唄)

街中ながら、はじめは狐につままれているのかと思った。次に今日は臨時休業日なのだろうと考えることにした。夕闇の中、明りの灯らない店の前で約1か月前に閉店していたことを知った時、約半年ぶりの来店を後悔した。 そこに行けばいるのが当たり前すぎて気…

11「侍タイムスリッパー」安田淳一監督

冒頭から人を食ったような音楽が続くが、手練れによる侍の命を懸けた決闘が映像として展開されているためになかなか目が離せない。このB級映画感満載の演出も底知れぬ自信ゆえのおどけなのかと思い始めてくる。そして主人公はあろうことか雷鳴の轟を合図に幕…

9.「幸せホルモンあふれるセロトニンヨガ」 有田秀穂、野村賢吾 (著)

都合上、職場で新人教育を行っていて感じたことがある。それは個々の実務の出来不出来以上に立ち姿の落ち着きや、トラブルに遭遇した時の挙動など印象が大きく評価されているという点だ。 そこでよい姿勢を保つ訓練や、動じないメンタルを養う方法を考え「瞑…

8「碁盤斬り」白石和彌(監督)、加藤正人(著)

「不得貪勝」むさぼれば勝ちを得ずー囲碁の格言 謹厳実直な上にも、思いつめると猪突猛進する堅物の武士ー柳田格之進に草彅剛がなりきっていると聞き鑑賞した。さて、本作の真の主人公とは商家の大旦那「ケチの源兵衛」だとも感じた。 損得づくは商売の上の…

7「下町サイキック」吉本ばなな(著)

怪談を娯楽として扱うように人は不思議なことや神秘に対する尽きせぬ興味がある。サイキックという言葉から私は心理学的な要素を連想しつつ、それが「人情」とどう結びつくのかと考えページをめくり始めた。 主人公は場や人が持つエネルギーを可視化し、軽度…

5「婚活マエストロ」 宮島未奈(著)

出会った2人がはじめて過ごす5分間の計測にタイマーではなくストップウォッチを使うのは鏡原さんの祈りーそんな一文を読んだとき、書店の中で声を立てて笑いそうになるのを抑えた。婚活マエストロ(女性であるため正確にはマエストラ)の異名をとり、数々…

4ある一夜の港の物語「フライデイ・チャイナタウン」荒木とよひさ(詞)海老名泰葉(作曲)

その初めて聞く歌詞は令和のものとは思われなかったが高揚感があった。断片的に聞き取った単語から検索し風変わりなタイトルを知った。言うなれば、これは日本が最も華やかだった時代の熱を圧縮保存している。 日本の歌謡界の絶頂を1975年~85年とする…

③恋と旅と気まぐれと「男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」山田洋二監督 渥美清主演

この映画は喜劇なのか、悲劇なのかと問われどうにも答えられなかったことがある。七重八重(ななえやえ)花は咲けども、48作を通じて主人公の恋は遂に実らない。しかし、山田洋二監督の人を慈しむ視点は通底しており喜劇であると私は見たい。 その旅語りが…

①何かに挑む者が持つ佇まい「成瀬は天下を取りに行く」宮島未奈

表紙カバーの女子が天下を取りに行く成瀬なのだろう。「哄(わら)う合戦屋」を想起させる佇まい。その引き締まった表情は現代日本の女子高生というより風雲急を告げる戦場を見据え妙策を練る軍師に見える。外見が全てではないはずだが、明らかに只者ではな…