みなとまち読書クラブ

良質なサードプレイスを構築する

①何かに挑む者が持つ佇まい「成瀬は天下を取りに行く」宮島未奈

 表紙カバーの女子が天下を取りに行く成瀬なのだろう。「哄(わら)う合戦屋」を想起させる佇まい。その引き締まった表情は現代日本の女子高生というより風雲急を告げる戦場を見据え妙策を練る軍師に見える。外見が全てではないはずだが、明らかに只者ではない気配を感じる。

 コロナ感染症流行下の世相を交えながら、何かに挑み続ける成瀬の思春期の横顔を周囲の視点から紡ぐ。彼女自身の視点も最後に明かされる。

 人生の中年期にもなれば洞察力とでも言うべきか、「これはこうなる」、「あの人はああなる」、「次の首相は〇〇である」みたいな見通しが利きすべてが当たらずとも遠からず、時流や心理展開を若い時よりは読み解けるようになる。

 例えば、天下をとったなら次は天下を治めなければならない。そして治世のためには優れた人材を登用しなければならない。果たして自分に、その領袖となるべき器があるのかと考え始めれば、取れる天下も取れまい。

 世の中にはやってみなければわからないことがある。そして人は誰も彼もが価値を認めるものではなくても、自分がしたいことに突進できる時期がある。それがまだ何者でもない成瀬の爽やかさであり、若さの特権である。