終戦から80年目の夏を迎えようとしている。東ヨーロッパや中東、そして東アジアにもきな臭い世界情勢がある。そのような中はたして、この国で普段から平和を考えている人はどれほどいるのか。また例えば私が特殊な思想的結社に所属することなく国際平和に貢献したい場合、どう行動をすればよいのか。正直、分からない。
タブーと言おうか「戦争責任」を問うことは今でも一般にしにくい。当時の対戦国を悪とすれば戦争は是だったとするロジックを導けるが、そこに逆転しない正義はあるのか。敗戦を時運の赴く結果とすれば、未来にもなりゆきで戦争が起こる可能性がある。戦争と敗戦で多くの国民が味わった日常的な苦しみを描き、末永い平和を希求することは作家に相当の覚悟が要求される。
本作では、はちきんのぶが活発な少女として成長し、多少の疑問を抱きながらも愛国の鑑(かがみ)たる教師になり、敗戦で失意を覚えつつ新たな一歩を踏みだそうというところまでが描かれている。
ところで著者は運命学に精通している。国家の運命を長期的・周期的視点で観察し、現状の因果律から未来を理性的に洞察するとき希望はあるのか。80年先の日本も平和であるように願う。