独立した6章から構成されている本作は、読む順の制約を受けずに1×2×3×4×5×6=720通りの読み方ができるという触れ込みを見て興味を惹かれ読んだ。ただ実際には一通りの読み方しかまだしていない。ところで結果として完成される全体像が同一なら読む順序を選択できるとことは画期的な仕掛けであると言えるのか。
むしろ本作の示唆は同じ町を舞台とする独立していたはずの6つの物語に俄(にわ)かに否応なく浮上する関連性に秘められていると感じた。
例えば時空間が断絶されたAとCのどこか似通った物語を埋めるミッシングリングBのスパイスに気付けるか。またDの物語を知った時に従前の情報に錯誤があることが判明しトリックを破ったように真相に至ることもある。
そもそも現実の世界で何かを探索するとき、得られる情報は時系列ではないし、主観的かつ断片的なものである。それをどう組み合わせるかで見える姿も千変万化しうる。構成の妙を本作は問う作品だと言える。
ところで先日の参議院議員選挙は既存勢力の凋落と新興勢力の台頭が目についた。いずれ小なるものが集合されるのだろうが、小さな成果を追う代償に政治的な大志を失わないように。